【原文】
来ぬ人を まつほの浦に 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
権中納言定家
【現代かなづかい】
こぬひとを まつほのうらに ゆうなぎに やくやもしおの みもこがれつつ

【原文】
み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣打つなり
参議雅経
【現代かなづかい】
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
【原文】
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも
鎌倉右大臣
【現代かなづかい】
よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのこぶねの つなでかなしも
【原文】
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
二条院讃岐
【現代かなづかい】
わがそでは しおひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
【原文】
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
後京極摂政前太政大臣
【現代かなづかい】
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねん
【原文】
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず
殷富門院大輔
【現代かなづかい】
みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず
【原文】
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
式子内親王
【現代かなづかい】
たまのおよ たえなばたえね ながらえば しのぶることの よわりもぞする
【原文】
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
皇嘉門院別当
【現代かなづかい】
なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき