【原文・歴史的仮名遣い】
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
柿本人麻呂
【ひらがな表記・現代かなづかい】
あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん
【現代語訳】
山鳥の尾のように長い長い秋の夜を、私は、恋しい人の訪れもなく、たったひとりで、寝なければならないのだろうか。
【文法・修辞法】
●「あしびきの」は山をみちびく枕詞。
●「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の」までが、「長々し」をみちびく序詞。
●「長々し」は形容詞「長し」を2つ重ねた畳語。
●「ひとりかも寝む」の「か」は疑問の係助詞。「む」は推定の助動詞「む」の連体形で、係助詞「か」と係り結びしている。
【作者・背景】
●『拾遺集』巻13収録
●柿本人麻呂(生没年未詳)
持統・文武の両朝(690~707)に仕えた。飛鳥時代の代表的歌人。三十六歌仙の一人。歌聖と呼ばれる。万葉集に多くの作品を残す。身分は低かったが、宮廷歌人として、天皇の行幸のお供をし、すぐれた歌を献上している。長歌でも有名。
●山鳥に関する俗信
山鳥を婚礼の祝いに贈ってはならないとする俗信はこの歌から生まれた。
●柿本神社(旧 人丸神社)
兵庫県明石市人丸(ひとまる)町にある柿本神社
江戸時代に小笠原氏により柿本人麻呂を祀る神社が創建された。人丸(ひとまる)から「火止まる」として防火の神様とされることもある。
最寄駅 山陽電鉄「人丸前」駅から徒歩5分。JR「明石」駅から徒歩20分。
