百人一首 六番歌

【原文・歴史的仮名遣い】

かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける

中納言家持

【ひらがな表記・現代かなづかい】

かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける

【現代語訳】

七夕の夜、かささぎが翼を広げて天の川に掛け渡したという橋を思わせるこの宮中の階段に降りた霜の、白くさえた色を見ると、夜もかなり更けたことだなあ。

【文法・修辞】

「渡せる」は「渡す(四段活用動詞)」の已然形+存続の助動詞「り」の連体形、渡しているの意味。

係助詞「ぞ」と「ふけにける」で係り結び。「更(ふ)ける」の連用形+完了の助動詞「ぬ」+過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」「なむ」「や」「か」は連体形で係り結びする。

【解釈論争】

●秋(七夕)か冬か

かささぎは七夕に関係する鳥なので、七夕(古典では秋の季語)の時期と解釈できる。一方、霜は冬の季節のものである。橋におりた霜ではなく、夜空の星を霜に見立てれば、天の川にかがやく星ということで七夕をうたったものということになる。

国学者賀茂真淵の説では、「かささぎの橋」は「宮中の御橋」のことを指し、七夕の行事で通った橋に、霜が降りていて冬を実感しているということになる。

【作者・背景】

●新古今集巻6

●大伴家持(718?~785)

三十六歌仙の一人。大納言大伴旅人の子。万葉集に最も歌の多い歌人で、440余首が載る。しかし、この歌は万葉集には見えず、詠み人知らずの歌を大伴家持に仮託したものと思われる。

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