【原文・歴史的仮名遣い】
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
阿倍仲麻呂
【ひらがな表記・現代かなづかい】
あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
【現代語訳】
大空をはるかに見渡すと、(この異国の空に)今しも月が美しくのぼっている。ああこの月は、故郷の春日にある三笠の山に出た、あの懐かしい月なのだなあ。
【作者・背景】
●阿部仲麻呂(698~770)
716(霊亀2)年、吉備真備・玄昉らとともに第9回遣唐使として派遣された。留学生でありながら科挙に合格するほどの秀才で、唐の玄宗皇帝に気に入られ、「晁衡」と中国名を名乗り唐の朝廷に仕える。李白・王維らの詩人とも交流があった。752(天平11)年第12回遣唐使の船に乗船して帰国しようとしたが安南(ベトナム)で遭難し、日本に帰らず唐で一生を終えた。
「天の原」の歌は唐から日本に帰国する際に、唐の友人らが開いた送別会で詠んだものである。
●三笠山
奈良市の東にある春日山の支峰。標高297m。御笠山または御蓋山とも書き、若草山との混同を避けるため「おんふたやま(御蓋山)」と呼ぶこともある。笠を伏せたような左右対称な三角形の形をしているため、こう呼ばれた。麓に世界遺産の春日大社がある。
春日大社のアクセスは、JRまたは近鉄「奈良駅」から、奈良交通バス約15分「春日大社本殿」下車、または奈良交通バス(市内循環外回り)約10分「春日大社表参道」下車徒歩約10分
https://www.kintetsu.co.jp/nara/report_powerspot/kasugataisha.html