百人一首 五番歌

【原文・歴史的仮名遣い】

奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき

猿丸大夫

【ひらがな表記・現代かなづかい】

おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき

【現代語訳】

奥深い山の中で、散り積もったもみじを踏み分けて、妻を慕って鳴く鹿の声を聞くときこそ。ひとしお秋は悲しい思いがすることだ。

【文法・修辞】

係り結び 係助詞「ぞ」と「悲しき」で係り結び。形容詞「悲し」の連体形。

【作者・背景】

●『新古今集』巻4

●猿丸大夫 生没年不詳

三十六歌仙の一人。元明天皇(在位707~715)の頃とも、元慶年間(877~884)の人とも言われる。古今集真名序に「大友黒主の歌、古の猿丸太夫の次也」とあるので、少なくとも大伴黒主より前の人物であることは確実。猿丸太夫は遊芸を業として巡遊する身分の低い芸能者と推測されている。弓削道鏡の変名または聖徳太子の孫の弓削王(ゆげのおおきみ)との説もある。『古今集』には詠み人知らずと書かれているが、『猿丸大夫集』にも収載されている。

●もみぢ(黄葉・紅葉)

古今和歌集の頃(905)は、黄葉と書き、萩の黄色の葉を指していた。新古今和歌集の頃(1210)には、楓の紅葉を指すようになった。「もみじに鹿」の取り合わせは、この歌から始まった。

百人一首 四番歌

【原文・歴史的仮名遣い】

田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

山辺赤人

【ひらがな表記・現代かなづかい】

たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ

【現代語訳】

田子の浦の海岸に出て、はるかなかなたを見渡すと、白一色の富士の高い峰に、今も行きがしきりに降っていることだ。

【文法・修辞】

●「白妙の」白いものにかかる枕詞。ここでは雪。

●つつ止め 接続助詞「つつ」で終わることで、「雪が降り続いている」ことを表す。

●万葉集の原歌は「田子の浦ゆ うち出てみれば 真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける」

「ゆ」は上代語で「から」の意味。「田子の浦から出てみると 真白に 富士の高い峰に 雪が降っている」と、「田子の浦から」見晴らしの良い場所に出て富士山を見たというのが原歌。新古今集では「田子の浦で」見たことになる。

【作者・背景】

●『新古今集』巻6

●山辺赤人(山部赤人) 生没年不詳

三十六歌仙の一人。奈良時代初期の下級役人。柿本人麻呂とともに「歌聖」と謳われた。

●田子の浦

駿河湾西沿岸。現在の静岡県静岡市清水区興津町の東北から由比・蒲原あたりの海岸。田子の浦から出て富士山が見えたとすると、薩埵峠の辺りと推測されている。世界文化遺産に認定された三保の松原は薩埵峠よりも16km南の地点。

「英気」と「鋭気」 養うのは?

ある字幕映画で見た「鋭気を養え」

たまにしか使わないから誤字はあるかもしれないが、リリース前に校閲はしっかりしてほしい。

国語辞典を引くと、

【英気】すぐれた気性・才気。何かをしようとする気力。

例文 英気を養う(=能力が十分発揮できるよう、休養をとる)。

【鋭気】鋭い気性・性質。鋭く強い気勢・意気込み。

例文 鋭気をくじく。

とある。

英気は才能・能力寄りの意味。鋭気は気性寄りの意味。

英の漢字は英雄のように、すぐれているという意味がある。適度に休まないと、十分に能力は発揮できないが、どんだけ眠っても持ち前の気性は鋭くならないということか。

目を使った慣用句②

目に留まる

見える。関心を引く。

例文 特徴的な筆使いが目に留まった。

目を離す

注意していたものから視線を移す。

例文 コンロの火から目を離さないで。

目を奪う

すっかり見とれさせる。

例文 ダイヤモンドの輝きに目を奪われた。

目を凝らす

じっと見つめる。

例文 有名な人物が書いたという掛け軸に目を凝らした。

目からうろこが落ちる

あることがきっかけで、今まで理解できなかったことが急に理解できるようになることのたとえ。

例文 その一言がきっかけで目からうろこが落ちた。

目を使った慣用句①

目が利く目利き

物事を見かける力がある。鑑識眼がある。

例文 あの仲買人は相当の目利きだから、いつも良いものを仕入れてくる。

目が肥える

良いものを見慣れていて、ものの良し悪しを見分ける力が増える。

例文 長年、一流の芸術作品を見続けて目が肥えてる審査員たちには、人並みのものでは響かない。

目が回る

①めまい。

②非常に忙しいことのたとえ。

例文 月末は、いつもの業務に加えて定例会議、進捗報告、集金業務と、目が回るほど忙しい。

目を引く

人の注意を引きつける。

例文 壁に彫られた猿の彫刻が目を引く。

目を白黒させる

ひどく驚きまごつく。

例文 突然の出来事に何が起きたか分からず、目を白黒させた。