言語雑学

【原文】

忘れじの　行く末までは　かたければ　今日を限りの　命ともがな

儀同三司母

【現代かなづかい】

わすれじの　ゆくすえまでは　かたければ　きょうをかぎりの　いのちともがな

【原文】

嘆きつつ　ひとり寝る夜の　明くる間は　いかに久しき　ものとかは知る

右大将道綱母

【現代かなづかい】

なげきつつ　ひとりぬるよの　あくるまは　いかにひさしき　ものとかはしる

【原文】

明けぬれば　暮るるものとは　知りながら　なほ恨めしき　朝ぼらけかな

藤原道信朝臣

【現代かなづかい】

あけぬれば　くるるものとは　しりながら　なおうらめしき　あさぼらけかな

【原文】

かくとだに　えやはいぶきの　さしも草　さしも知らじな　燃ゆる思ひを

藤原実方朝臣

【現代かなづかい】

かくとだに　えやはいぶきの　さしもぐさ　さしもしらじな　もゆるおもいを

【原文】

君がため　惜しからざりし　命さへ　長くもがなと　思ひけるかな

藤原義孝

【現代かなづかい】

きみがため　おしからざりし　いのちさえ　ながくもがなと　おもいけるかな

【原文】

みかきもり　衛士のたく火の　夜は燃え　昼は消えつつ　物をこそ思へ

大中臣能宣朝臣

【現代かなづかい】

みかきもり　えじのたくひの　よるはもえ　ひるはきえつつ　ものをこそおもえ

【原文】

風をいたみ　岩打つ波の　おのれのみ　くだけて物を　思ふころかな

源重之

【現代かなづかい】

かぜをいたみ　いわうつなみの　おのれのみ　くだけてものを　おもうころかな

【原文】

八重むぐら　茂れる宿の　寂しさに　人こそ見えね　秋は来にけり

恵慶法師

【現代かなづかい】

やえむぐら　しげれるやどの　さびしさに　ひとこそみえね　あきはきにけり

【原文】

由良のとを　渡る舟人　かぢを絶え　行く方も知らぬ　恋の道かな

曾禰好忠

【現代かなづかい】

ゆらのとを　わたるふなびと　かじをたえ　ゆくえもしらぬ　こいのみちかな

【原文】

あはれとも　言ふべき人は　思ほえで　身のいたづらに　なりぬべきかな

謙徳公

【現代かなづかい】

あわれとも　いうべきひとは　おもおえで　みのいたずらに　なりぬべきかな